Tokiko Sakoda
弁護士
迫田 登紀子
小学校時代は剣道。中学校時代はソフトボール部。高校時代は生け花したり,演劇部のぞいたり。大学時代はワンダーフォーゲルのサークルでした。
いま,一押しの趣味は,小学生の娘と,多くの友人たちとのキャンプライフ。炭火で色々な料理を作って大いに飲んで食べて,星を見て,語り合う。
コロナ以降,こうした形での人とのつながりの大切さを痛感しています。
牡羊座のB型,母,夫,娘,カブトムシの幼虫10匹,メダカ15匹の大家族です。
特に関心をもって取り組んでいる分野
- 全弁護士に占める女性弁護士の割合はわずか2割。そのため,女性のご相談を受ける機会が多いです。
- 相続など,亡くなった方と残された家族のための活動
- 成年後見や遺言など,高齢の方のサポート
- いじめ,体罰,学校事故など,子ども達のサポート
地域活動
筑紫野市子どもの権利救済委員
弁護士会活動
福岡県弁護士会 憲法委員会委員長
日弁連憲法問題対策本部 委員
福岡県弁護士会・日弁連 子どもの権利委員会委員
仕事に対する思い
ご相談者の方の生きざまを,私自身がかみしめることだと思っています。
大型訴訟活動
いじめ自殺訴訟
ハンセン病違憲国賠訴訟・家族の訴訟
弁護士への依頼は一生に一度あるかないか。
その「人生の1回」を大切にしたい。
Q. 弁護士を目指したきっかけは何ですか?
A. 理数系科目が得意だったので、もともとは医者を目指していました。ところが、大学の進路を決める時期になって、医療事故にあった父から「加害者になることがあるので、医者にはならないでほしい」と言われたんです。
どういう職業があるのかと考えていたところ、当時、高校のPTA会長をしていた弁護士が、私たち生徒と若い弁護士たちとの交流の場を設けてくれました。その経験がきっかけとなり、法学部に進もうと決めました。
Q. ちくし法律事務所へ入所した経緯は?
A. 一橋大学法学部在学中、時代はバブル。時代の恩恵で就職は引く手あまたでしたが、就職活動をせず、司法試験の勉強を始めました。当時は、司法試験合格までに時間がかかる人も多い時代で、私は10年かかりました。この間に、夫と知り合い結婚。夫も弁護士です。
司法試験合格から司法研修所の入所まで、当時は半年間ほど時間がありました。先に弁護士になっていた夫がハンセン病違憲国賠訴訟に参加していたので、ハンセン病裁判の弁護団会議に参加させてもらったり、裁判にも足を運びました。
自分の目指す弁護士像が固まったのは、このころです。企業法務ではなく、人々の暮らしに根ざした困りごとに関わりたい。その悩みが、法律や国の政策に起因しているならば、それを糺す裁判ができる弁護士になりたい。「その路線なら、ちくし法律事務所が一番総合力が高く、勉強になるよ」と先輩方に勧められ、入所させてもらいました。
Q. どんな分野に取り組んできましたか?
A. 弁護士は、受け身の仕事なので、どんな相談を持ちかけられるかによって、関わる分野が変わってきます。私は、地域の方々のお困りごとに関わりながら、新人だった2000年代前半は「ハンセン病国家賠償請求訴訟」。2000年代半ばからは、浦田弁護士の指導の下で「薬害C型肝炎訴訟」。その後は、コンビニの店主が本部を、新聞販売店が本社を訴えるなど、一人親方店主VS大企業といった案件も多く手がけました。
Q. 子どもの自死問題では「九州の第一人者」とうかがいました。
A. 子ども問題にかかわるようになったのは、駆け出しだった2001年。この年、福岡県が、全国にさきがけて、鑑別所にいる非行少年全員に弁護士を付ける制度を立ち上げました。現在に至るまでに100人ぐらいの非行少年のサポートに当たりました。
そんな中、2006年に教育基本法が改悪されます。教育基本法は、日本国憲法と共にできた法律です。大戦中の教育は、戦争をする国家のために行われていました。しかし、その反省から、教育基本法は、“国は子どもたちひとりひとりが生きたい人生を生きるために教育を行う”ことを目標としたのです。ところが、2006年の安倍政権のとき、国家に必要な人材として才能を発揮してもらうために教育をする、そういう方向に変わったのです。
私はハンセン病の裁判を通して、国家によって虐げられ、人生を変えられてしまった人々と出会う中で、自らの思う人生を歩むのが、いかに尊いことかを痛感しました。国の都合でその人の生き方を変えられるのは問題だという思いから、改悪に反対しました。その活動の中で、同じ思いの人たちと繋がりました。
2013年、高校でいじめを受けて自死をした生徒の家族をサポートしほしいとの依頼が来ました。私が、非行少年のサポートや教育基本法の問題に関わっていたことから紹介を受けられたとのことでした。以来、いじめや体罰により自死をしたお子さんのご遺族の支援に数多く携わっています。
Q. 女性からの依頼ではどのようなものが多いですか?
A. 普通の裁判所で扱う事件では、「お金を貸したから返してくれ」、「こういう仕事をしたのに報酬を払ってくれない」など、そこに感情はあまり入ってきません。でも、家庭裁判所で扱われる離婚や相続などの問題は、「感情のケア」が大事になります。同じ女性同士、経験上気持ちが分かり、寄り添うことができますから、やはり女性からの依頼を受けることが多いですね。
依頼者の心配ごとと、弁護士の視点からみえる問題点とがずれていると感じることがあります。ご本人にとってはものすごく大変な不安であっても、アドバイスひとつで、早期に心配を取り除けることもあります。逆に、ご本人が重要視していないことが、実は法的なお手伝いが必要なことだったりします。だから、私たちにご相談いただければ、幸せを実現するためのプロセスが的確につかめます。
Q. 相談にのる際に配慮していることは?
A. ご相談を受ける際には、まずは、問題点をご一緒に整理します。一見複雑そうに絡み合っている問題も、小さなブロックごとに分解することができますし、解決していくべき順番に並べることができます。そして、ここは弁護士が手伝えます、ここはこういう方法がありますなど、一つずつアドバイスさしあげます。
解決の方向性にいくつかの選択肢があるときは、相談者が何を心配されているのか、どんな方向を目指しているのかを慎重に確認しながら、ご一緒に選択をしていきます。
現状の法律制度を利用して、相談者のお気持ちが100パーセントが叶えられるならいいのですが、多くの場合、希望と現実との間にギャップがあります。ここをどう埋めていくのか。もやもやした気持ちを少しでも解消するにはどんな工夫ができるのか、一緒に考えるようにしています。
そうやって、問題解決のためのロードマップを作ります。
「見通しの見える化」も大切です。これからどうなっていくのか、どのような過程をたどるのか、ゴールはどこなのか。説明の紙などを使いながら、できるだけ目で見える形で伝えています。
みなさんにとって、「弁護士に相談する」というようなことは、おそらく一生に一度。毎回、真剣勝負で臨んでいます。
Q. 仕事をするうえで大切にしていることは何ですか?
A. 弁護士の仕事は、人と人との間のトラブルのお手伝い。必ず、相手方がいるので、相手方のリアクションによって、依頼者は新たなストレスを抱えることがよくあります。そのときは、大きな目標に立ち返って、そこに照らして、どう対応すべきかをご一緒に考えます。
依頼者が不安を口にされた場合は、その不安がどこから来ているのか、その方の抱えている事情や背景に目を向け、時間と愛情をかけて、依頼者を丸ごと考えることが大事だと思います。
私がこのように考えるようになったのは、ハンセン病集団訴訟での経験からです。時間をかけて依頼者の人となりを理解できれば、信頼関係は確かなものになります。依頼者と共に歩んでいくなかで、たくさん話をし、お互いを信頼しあい、ともに困難を乗り越えたいと思っています。